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春ですが、調子は皆さまいかがでしょうか

[2024.03.31]

「患者さんが多くなったり、状態が悪くなりやすい季節はありますか」という質問を患者さんやご家族だけでなく、プライベートの知人からも聞かれることがあります。

医療機関でも季節による影響を大きくうける科と、それほどではない科があります。例えば花粉症を主に診察する科である耳鼻咽喉科では花粉症の季節である春に患者さんが殺到し、影響がとても大きいです。花粉症ほど極端ではありませんが心筋梗塞は冬にやや多く、循環器内科は冬に忙しくなる傾向があるようです。

 

湘南こころのクリニックが専門とする精神科・心療内科は、季節による影響が少ないほうの科でしょう。ただし、しいてあげるならば春に調子をくずすかたが多い傾向はあります。

なぜ、春に調子をくずす人が多くなるのでしょうか。こころの不調は様々な要因が影響するためひとつだけに答えをしぼるのは難しいのですが、大きくわけると①気候の影響②生活の変化による影響のふたつが関係していると考えています。

 

気候の影響としては、まず寒暖差があります。特に今年は、一週間ほどで気温が10℃ほど変化することが何度もあり、寒暖差が大きい年でした。このブログ記事を書いている令和6年3月31日の平塚市の最高気温は26℃、4月1日の最高気温は17℃と、なんとたった一日で9℃もの変化があります。なだらかな変化ではなく急な変動があることは、今年は多くありました。患者さんそれぞれで体質により苦手な気候は異なるのですが、特に「暖かくなったり寒くなったりする」変化は、苦手なかたが多いようです。気候の変化は身体の負担になります。そして脳は身体の臓器の一つであり、脳に負担がかかることから精神面での不調につながることがあります。

気候の影響としては、春に多い「花粉症」もあります。花粉症は、花粉症自体が気怠さや意欲がでないことにつながりますし、花粉症の治療薬で眠気がでて活動量を減らすこともあります。病気そのものと治療薬のどちらも精神面での不調にも結びつきます。

 

当然ながら日本の年度替わりである4月には、進学、進級、就職、異動、転居などが多くみられます。本来喜ばしいことであったとしても、今までと違う環境に身をおくことが負担になりえます。患者さん御本人に変化がなくても、御家族と同居しているかたは御家族に変化があることも多いです。仕事をされているかたは、ご自身の異動はなくても同僚・上司・部下のどなたかが異動されることは多くあるでしょう。

 

季節に関連した不調がでた場合はどのようにすればいいでしょうか。原因が何であるにせよ、不調の程度がそれほど大きくない場合は一時的なものと割り切って時間経過とともに不調が改善するのを待つのもひとつの方法です。不調がそれなりに強い場合は、もともと内服している薬剤を一時的にでも調節するのもひとつの方法です。

それぞれの原因ごとの対応もあげてみましょう。

寒暖差による影響は最も対策をとりにくいのですが、「肌寒い日は暖かい恰好、暖かい日は涼しめの恰好」をして、過ごしやすくすることはおすすめします。ときどき、「肌寒いけど、春の恰好で薄着をする」「暖かいけど、厚着ですごす」かたもいますが、寒さや暑さを感じること自体が身体に負担がかかります。暦にあわせたお洒落をしたいというお気持ちもよくわかりますが、寒暖差による不調がある場合には暦より当日の気候により服装を決めたほうが過ごしやすくなるでしょう。脱ぎ着しやすい、折りたためて鞄にはいる薄手のジャンパーなど(例えば、このようなものです)をもってみるのもひとつの対策です。

花粉症による影響は、やはり花粉症自体への対応を考えるべきです。耳鼻咽喉科など花粉症を専門とする医療機関へ通院をされているかたは、実際に花粉症ででている症状と薬剤を内服した際の変化などをお伝えしていればできうる対策はとっていただいていることと思います。もし花粉症があるにも関わらずまったく内服をしていない場合は、よほど軽度でないかた以外は薬剤での治療をすすめます。ドラッグストアなどで買える市販薬で花粉症への対策をされているかたは、もしも現在使用している薬剤で十分に改善をしていればそのままでいいのですが、不十分な改善であれば医療機関で薬剤の処方をうけることをすすめます。ドラッグストアではまだ購入ができない、近年開発された薬剤もあるためです。

生活の変化による影響は、「変化への心配を膨らませすぎない」ことはすすめられます。実際に変化することは負担になりますが、変化を心配しすぎて不調になること、夜に考え事をして眠れなくなって調子を崩すことも多くみられます。周囲にお話しができるかたがいれば、ご自身の心配について日中にお話しをすると少しやわらぐところもあるでしょう。

 

調子がゆれることも多い春ですが、季節による変化は日本での生活を続けるならさけることができません。状態がいいかたは御本人なりに過ごしていただけばいいのですが、状態があまりよくないかたでも自宅からの外出が可能であれば、道端にさく桜を眺める、季節ものの食べ物を購入するなど、春を楽しめたり喜ばしいと思える行動をすることをおすすめします。外出をしてやはりおつらかったら無理にはすすめませんが、試しにご自宅からでてみると気分転換になった、よかったというかたも今までに多くいらっしゃいます。

 

 

 

 

 

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