不安神経症について
「不安神経症」を広い意味でとらえると強迫性障害やパニック障害を含むこともありますが、こちらのページでは国際的な診断基準にある「全般性不安障害」に準じた状態を不安神経症として説明します。
どんな病気でしょうか?
明確な理由がなくても生活のなかで不安や心配が生じ、ときに身体の症状や気分の落ち込みなど抑うつ症状がでることもあり、日常生活や社会生活での支障がでてくる病気です。単に不安障害という名前で呼ばれることもあります。もともと不安をかかえやすいかたが心配事や悩み、過労や睡眠不足などきっかけがあってかかることが多いですが、明確なきっかけがないのにかかることもあります。
頻度について
報告によって違いはありますが、全般性不安障害に一生のうちに一度はかかる頻度は全人口の5%程度といわれており、頻度の多い病気です。
頻度は多いのですが、不安神経症のかたの不安は強い発作ではなく漫然とつづくこと、不安について程度が強くても不安がでることは理解できるものが多いことから、長年苦痛を感じていながら医療機関への受診につながらないかたは多くみられます。
症状について
仕事や学業、家庭生活などについての様々な出来事や活動に対しての心配や不安、緊張がでます。今までなら不安を自分でコントロールできて不安から離れることができていたのに、頭の中でぐるぐると不安がつづいてしまうようになります。
身体の症状として、動悸、発汗、ふるえ、息苦しさ、嘔気、筋肉の緊張、ふらつき、めまい、口の渇きなどを伴うこともあります。落ち込みなど抑うつ症状、いらいらしやすい、睡眠不良を伴うこともあります。
パニック発作では強い不安と身体症状が発作的にでますが、全般性不安障害では漫然と症状がつづくという違いがあります。
診断について
国際的な診断基準では「症状が6ヶ月以上つづく」「不安がない日よりおこる日が多い」ことを基準としていますが、必ずしもこの基準を満たさずとも生活のなかで不安や心配のためにつらさや苦痛を感じていたら治療の対象になります。
不安や心配で困っている状態が続くかたは、一度心療内科・精神科へ受診してみることをすすめます。不安で困って通院をはじめたかたのなかに、不安神経症ではない病気から不安が生じているかたもいますので、診断については特にほかの精神科・心療内科の病気からくる不安でないかということも注意しています。
不安や心配は必要なものです
人間は不安や心配があるからこそ、さまざまなことに備えること、努力することができます。もしも不安や心配がなかったら、災害に備えることもせず、危険なことをさけることもしなくなるでしょう。不安や心配があるから、試験に備えて勉強したり、よりよい仕事のために研修をうけてがんばろうとしたり、将来に備えて節約することができます。
不安や心配でつらくなっているかたも、それ自体が悪いものではなく、必要だけどバランスがくずれて過剰になっているんだと考えることをすすめます。
治療について
診察では、どんな場面で不安や心配がでたかを聞き、考え方などについての話しをします。なかなか普段の生活では不安について話す場所はなく、不安を話すだけで楽になったというかたもいますし、考え方のくせに気がついて不安と距離がとれるようになったというかたもいます。
薬剤としては抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬などを用いて不安や緊張の程度が軽くなることを目指します。睡眠不良を伴う場合には睡眠導入剤を用いることもあります。不安や心配は生存に必要なものでありなくなることはありませんが、軽減しうまくつきあえるようになることを目指します。特に不安神経症の患者さんは薬剤について過剰な心配をすることも多いのですが、「副作用が強ければやめればいい」し「効果がでないものをずっと続けることはない」という原則を意識し、医師の判断で使用がすすめられる場合には使用をしていくことをすすめます。
「早くよくしたい」というあせる気持ちは「まだよくならない」ことに注目し不安を増やすことにもつながります。時間をかけながら少しずつよくなっていくのを待つほうが、一見遠回りにみえてもよくなる近道になるものであると意識していくことをすすめます。