強迫性障害について
どんな病気でしょうか?
繰り返し不快なイメージ(強迫観念)を思いうかべ、それを打ち消すための行動(強迫行為)を繰り返すことで、多くの時間がかかったり生活での支障がでてくる病気です。
強迫観念が過剰であったり理にかなったものではないと認識しているかたも多いのですが、それでも振り払いきれず繰り返し思い浮かべてしまいます。
頻度について
一生の間に一度は強迫性障害となる人は全人口の2~3%程度といわれています。男性では6~15才、女性では20~29才に病気がはじまることが多いといわれています。
引っ越し、就職、出産など、生活上の変化がきっかけになり、病気になることもよくみられます。
症状について
強迫観念(繰り返す不快なイメージ)や強迫行為(強迫観念を打ち消すための行動)については、個人差が大きく様々な内容のものがあります。具体例を何個かあげてみます。
汚染に関するもの
手が汚れていて不潔である、汚いものがついているという考えから離れられず、手を繰り返し洗う
加害に関するもの
自分が歩いているときに人にぶつかったのではないか、道でけった石ころで人がけがをするのではないかと思い込み来た道を何度も振り返りすすめなくなる。
整理や規則性に関するもの
部屋のものの並びが本人に思い浮かぶ正しい順序や配置になっていないと落ち着かなくなり、ちょうどいいと感じるまで時間をかけて整理をする
確認強迫
ガスを消し忘れていないか、鍵をかけ忘れていないかが心配になり、確認をして家をでたにもかかわらず外出先で気になって落ち着かず、家に戻って確認をする
儀式行為
横断歩道の白線は必ず右足で踏むなど自分のなかで決めた行為をしないと不吉なことがおこるという考えがとめられず、その行為をくりかえす
強迫観念と強迫行為の内容は個々の患者さんによって異なり、上記で記載したのは一例にすぎません。
強迫症状があること自体が苦痛なのですが、強迫症状のために外出がままならなくなったり、仕事や学業に支障がでるなど生活への支障がでることもあります。
自分での確認だけでなく、家族や周囲の人に確認を求める「巻き込み」とよばれる行為を伴うこともありますが、強迫観念と強迫行為を強固にすることにつながるといわれており、なるたけやめることをすすめます。
診断について
個人差が大きい病気であり、どのような強迫観念と強迫行為があり、どの程度生活への影響がでているかについて聴取して診断をします。うつ病や社会不安障害など他の疾患を合併することも多くあり、診断では注意をしていきます。統合失調症のかたが強迫性障害と似た症状を呈することもあるため、慎重に診断をしていきます。
治療について
薬物療法をおこない強迫症状の軽減をはかり、精神療法を重ねることでさらに症状の軽減を目指します。強迫症状が消失に至るのは難しいことも多いのですが、症状を軽減させることで生活への支障を減らすことができます。
薬剤の役割としては、強迫症状の程度の軽減を目指します。具体的には、SSRIと呼ばれる種類の抗うつ薬やクロミプラミンという抗うつ薬が中心になります。もともとは統合失調症に使用する薬剤である抗精神病薬が強迫症状に有効なこともあり、ときに使用をします。睡眠障害を伴う場合には睡眠導入剤を使用したり、不安の軽減のために抗不安薬を用いることもあります。
精神療法としては限られた診療時間のなかで、暴露反応妨害法のエッセンスを用いた治療をおこないます。暴露反応妨害法とは、強迫観念を打ち消そうとしておこなう強迫行為をあえておこなわずに我慢してすごし、時間がたつうちに不安や恐怖が減ってくるのを実感する治療です。治療自体が苦痛を伴うものですので、薬剤で症状が軽減した後に負担の軽いものからおこなうのが一般的です。
生活の支障が著しく強い場合、外出ができず家に閉じこもりがちになっている場合は、一般的なクリニックでの治療は難しく入院での病状評価や治療をしていくことがすすめられます。
当院は小規模の心療内科・精神科クリニックであり、生活への支障は著しく強くはなく本人が来院できる状態のかたを対象とし、外来による一般的な治療をおこなっています。