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躁うつ病について

どんな病気でしょうか?

 「気分の落ち込みや意欲がでない」うつ状態と、「気分が高揚し活動や口数が増える」躁状態をくりかえす病気です。双極性感情障害、双極性障害という呼ばれかたをすることもあります。躁状態がそこまで重くなく軽躁といわれる状態であるものを「双極Ⅱ型障害」、躁状態が重く社会的・職業的に問題がある状態であるものを「双極Ⅰ型障害」とする分類が一般的です。

 

 この病気については「うつ病と治療薬が異なる」のですが「うつ病と間違われやすい」という特徴があります。

 うつ病については啓発活動で世の中で知られるようになってきましたが、躁うつ病についてはまだ十分知られていません。治療をしているけれどもうつ病がなかなかよくならないかたでこのページを開いたかたがいましたら、最後までこのページをお読みすることをすすめます。もしも、躁や軽躁かと思う状態があったけれど主治医に話していないことがあれば、是非ともお伝えすることをすすめます。

 

診断が難しい理由

 「躁うつ病」という名前がついていますが、そもそも躁とうつの期間は同じではありません。躁である期間は、うつである期間とくらべてずっと短く双極Ⅱ型障害では十分の一にも満たないといわれています。躁うつ病のかたで抑うつ症状がはじめにでた後に、十年以上してからはじめて躁症状がでてくるかたもいます。

 双極Ⅰ型障害の躁状態では明らかに平時の本人と比べて変化があるため、もともとの本人を知るかたならば通常は変化に気がつくことはできます。双極Ⅱ型障害の軽躁状態では、例えば「普段はしない掃除を一生懸命した」「思い立って普段はいかない国内の日帰り旅行に行った」「仕事をいつもより長時間集中してできた」程度の行動面での変化しかなく、誰も困ることはなく周囲の人間が変化に気がつかなかったり本人も「少し調子がよかった」くらいにしかとらえられないこともよくあります。

 そして、躁うつ病のうつ状態は、うつ病ででてくるうつ状態とほぼ同じものです。

 

 つまり、「うつの状態だけではうつ病と躁うつ病は区別がつかない」のに、「躁状態の期間がうつ状態と比べてきわめて短い」「実際は躁うつ病なのに長年にわたりうつ症状しかきたさない患者さんもいる」「軽躁状態は周囲の人も本人も誰も気がつかないこともある」ため、実際に躁うつ病であるかたが、長年にわたりうつ病と診断をされることが多いのです。

 

 うつ病と診断されたかたの10人に1人は後に躁うつ病に診断が変更になったという報告や、躁うつ病の患者さんは半分以上初診時にうつ病の診断であったという報告もあります。

 

 「うつ病と診断している患者さんで、抗うつ薬を複数しっかり使用しても効果がでない場合に、次に抗うつ薬を使うより躁うつ病の治療薬を用いたほうが改善する可能性が高い」という報告もあります。専門的にいうと、治療的診断といって、「診断が確定しきれないけれど疑わしいと考えて治療をして、効果があったならその診断が適切と判断する」という考えに基づく方法です。

 

頻度について

 双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害をあわせて、全人口の1~2%程度といわれています。

 20-30代での発症が多いといわれていますが、10代で発症するかたもまれではありません。

 

症状について

 躁うつ病では、「気分の落ち込みや意欲がでない」うつ状態と、「気分が高揚し活動や口数が増える」躁状態や軽躁状態、うつ症状の一部と躁・軽躁症状の一部がまざった状態である混合状態になることがあります。

 

うつ状態

 うつ病ででてくるうつ症状と、躁うつ病のうつ状態ででてくる症状は似ており、どちらかを区別するのはうつ症状だけでは困難です。躁うつ病のうつ状態では、妄想が出現する確率がうつ病よりも高いこと、うつを繰り返す傾向があること、25才より前の発症がうつ病より多いことは指摘されています。

 

 躁うつ病で出現するうつ症状としては、うつ病と同じく下記の症状があります。

抑うつ気分 

気分の落ち込み

興味と喜びの喪失

好きだったことや趣味に対しても興味が持てなくなったり、楽しいと感じなくなる

意欲低下

やる気がおきない

罪責感 

実際には問題がないことに対して、自分が悪いことをしたと責める

食欲低下 

食事を食べたいと思えなくなったり、食事量が減る

不眠 

寝付けない、途中でおきてそのあと眠れない、朝早くに目がさめる

 

重症になると下記の妄想が出現することもあります。

 

心気妄想

実際には身体の異常がないのに「病気になった」と思い込み、検査をしたり合理的な説明をしても受け入れない

貧困妄想 

実際には経済的に困っているわけではないのに「お金がなくて大変だ」と思い込み、他者からの合理的説明を受け入れない

罪業妄想 

実際には何も悪いことをしていないのに「罪をおかしてしまった」と思い込み、他者からの合理的説明を受け入れない

躁状態・軽躁状態

 躁状態・軽躁状態では、気分の高揚、活動が増える、口数が増える、睡眠時間が少なくても平気で動き回るなどの症状があります。

 軽躁状態では活動が増えても程度がそこまでではなかったり、「仕事をいつもよりだいぶ集中してできた」「旅行に思い立って急に行った」「少し贅沢だが元々ほしかったものを買った」など誰も困ることはない変化であり、周囲も本人も気がつかないこともあります。

 躁状態では、非常に高額の買い物をしたり、ずっといらいらしてどなりちらしたり、気が大きくなって突拍子もない事業をはじめたり、身なりが急に派手になってぺらぺらと見知らぬ人に話し続けたりなど、後に困ってしまう活動をすることもあります。躁状態は明らかに大きな変化であるので普段の本人を知る人が見れば通常は気がつきますが、躁状態の本人は変化を指摘し行動をおさめるよう促しても受け入れないことが多くみられます。

 

混合状態

 「混合状態」といってうつ症状の一部と躁症状の一部がまざった状態になることもあります。気分・思考・意欲の一部はうつ方向で一部は躁方向となります。例えば、気分はうつ方向、思考と意欲が躁方向となると、「ネガティブな考えがいろいろとわいてきて、じっとしていられず動き回らないと落ち着かない」となります。

 

診断について

 特に軽躁状態があるかないかについては診断が難しいことが多いのですが、活動が増えた時期に同時に気分の変化や睡眠に変化がなかったかなどに注目して診断をします。ご本人はうつ状態のことは話せても、躁状態や軽躁状態は「ちょっと調子がよかっただけ」と解釈し診察で話してくれないこともあり、家族など周囲のかたのお話しが参考になることも多くあります。

 うつ病という診断をした患者さんでも、実際は躁うつ病ではないかということは意識しながら診察をしています。

 

治療について

 躁うつ病では、気分安定薬とよばれる種類の薬剤と、統合失調症の治療にも使われ躁うつ病にも有効な抗精神病薬とよばれる種類の薬剤が主に使用されます。

 薬剤は、効果としてうつ状態の改善、躁状態・軽躁状態の改善、気分の安定作用のどれを重視するかや、副作用のバランスを考えて選択します。

 躁うつ病のうつ状態で抗うつ薬を使用するかさけるべきかは専門家のあいだでも意見がわかれるところです。少なくとも、気分安定薬や抗精神病薬と併用すること、病状を不安定にさせている可能性が否定できない場合は中止を検討すること、双極Ⅰ型障害では使用しないことがすすめられます。

 躁うつ病では、なかなか一つの薬剤だけで病状を安定させるのが難しく、複数の薬剤の使用を要することが多くあります。状態が安定したあとも薬剤を中止すると再発する可能性が高く、継続していくことがすすめられます。

 起床や就寝、食事の時間をなるたけ一定にすること、活動量を一度に増やしすぎないことは病状安定に有効といわれており、診察では生活の状況についても話をします。

 

 躁状態で行動面の問題が大きい場合やうつ状態や混合状態で死にたい気持ちが強い場合は、外来での治療は難しく入院での治療がすすめられます。

 

通院先について

 躁うつ病の治療のためいずれかの医療機関への通院が必要になります。激しい躁状態のある双極Ⅰ型障害のかた、過去に入院が必要な状態に繰り返しなっているかたは診療所・クリニックではなく入院施設のある医療機関への通院をすすめます。うつ状態や混合状態で死んでしまいたいという気持ちが現在あるかた、現在躁状態で怒りや行動を制御できないかたは、入院施設のある医療機関での入院相談を早めにしていくようにしてください。

 当院は小規模な精神科・心療内科のクリニックであり、病状によっては当院の対応が難しいと判断される場合もあることはご了承ください。

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